練習問題『 島国の民族性 』
【問題】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。
先頃、初夏の陽気の東京から北海道に出かけた時のことだ。出発前の空港で「(a)トウ着地は雪、天候次第で引き返します」と放送があった。横にいたご婦人がつぶやいた。「いやねえ、同じ日本なのに。縦に長いからいけないのよ。横に長けりゃいいのにね」
(1)気持ちは分かるが、国土が南北に長いおかげで、同じ頃に異なる季節感を楽しめもする。いわば、[ A ]四季だ。逆に東西にうんと長ければ、米国のように国内に時差ができ、やっぱり「いやねえ」になるかもしれない。
国土の形状は、そこで生まれ育った人の考え方にも影響する。たとえば、島国かどうかは国民性を決定づける大きな要素といえる。政府の世論調査(75年)で「30年後の日本」を聞いたところ、日本人の10の特性のうち、「(2)島国根性」は「義理人情」「勤勉性」に次いで「変わらないもの」の3位だった。
32年後の日本社会では「愛国」のメッセージが定席を得た。自信を持てと叱咤(しった)し、(b)スタれゆく義理人情や勤勉性を嘆くのはいいが、周辺への敵意をあおるばかりの、粗雑で乱暴な言(c)ジも多い。
島国には、大海に漕(こ)ぎ出す(d)シン取の気性も根づきうる。一方で、水平線の先に(3)思いが至らねば、自分の都合とモノサシだけで考えやすい。異なる民族や文化には尊大になるか、妙に卑屈になりがちだ。
(4)心の中の「島」が大きすぎると、海外旅行のたびに「やだねえ、同じ地球なのに」とぼやくことになる。祖国への誇りや愛情は国際人たる必要条件だが、そういうものは、ほどよく、賢く持ちたい。
『朝日新聞』2007年4月23日付 天声人語より
【問1】下線部(a)「トウ着地」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.全行程をトウ破する。
( )
2.トウ底むりな話だ。
( )
3.文学に傾トウする。
( )
4.事業にトウ資する。
( )
【問2】下線部(b)「スタれゆく」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.コウ涼とした景色。
( )
2.組織が壊メツする。
( )
3.スイ退の一途をたどる。
( )
4.核兵器のハイ絶を訴える。
( )
【問3】下線部(c)「言ジ」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.暗ジにかかる。
( )
2.ジ任に追い込まれる。
( )
3.ジ善事業を行う。
( )
4.公園を掃ジする。
( )
【問4】下線部(d)「シン取」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.改善するようシン言する。
( )
2.デザインを刷シンする。
( )
3.所得をシン告する。
( )
4.書類シン査に合格する。
( )
【問5】下線部(1)「気持ち」の説明として最も適当なものはどれですか。
1.出発前の放送を耳にしてふと考えついた自らの経験に基づく解決策を、居合わせた人に伝えたいという気持ち。
2.同じ日本なのに東京と北海道では天候がまったく異なることに驚き、横に長い島国であることを嘆く気持ち。
3.雪が降ると分かっている季節に北海道へ出かけなければならない不運について、とにかく誰かに訴えたいという気持ち。
4.雪のために引き返すことになるかもしれないという不満を、日本の国土の形状にぶつける気持ち。
【問6】空欄[ A ]に入る語句として最も適当なものはどれですか。
1.同じ次元の
2.天候次第の
3.時間差のある
4.季節感のない
【問7】下線部(2)「島国根性」に当てはまらないものはどれですか。
1.判断が鈍い。
2.閉鎖的である。
3.視野が狭い。
4.こせこせしている。
【問8】下線部(3)「思い」の説明として最も適当なものはどれですか。
1.日本人が理想とする「愛国」のメッセージを、海を越えた国際社会にまで伝えようという思い。
2.義理人情や勤勉性といった日本人が理想とする古くからの国民性を、後世に残すべく人々に広めようという思い。
3.諸外国の文化やそこで暮らしている人々の生活を受け入れ、日本と異質であることを尊重しようという思い。
4.諸外国に存在する日本とは異質な文化や生活を、自分の目で見て体験してみようという思い。
【問9】下線部(4)「心の中の「島」」の説明として最も適当なものはどれですか。
1.日本人の国際性
2.日本人の愛国心
3.日本人の公共心
4.日本人の合理性
【問10】本文の内容に合うものはどれですか。
1.国土を形づくっているありさまによって、その国の国民に共通する感情や考え方は左右されるため、国土の形状が与える影響は軽微なものではない。
2.国土の形状はそこで暮らす人々の国民性に大きな影響を与えるものであり、海に囲まれた島国に住む日本人には、祖国を愛する心が育ちやすい。
3.日本人の国民性は徐々に変化はしているが、「義理人情」と「勤勉性」はここ30年来決して変わることのない日本人の大きな特性である。
4.祖国への誇りや愛情を持つことは国際社会を生きていく上で必要だが、同じ地球人として同一の価値観を持つことも重要である。
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