練習問題『 平和の実現する日は 』
【問題】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。
そろって小さな手をあげて、園児が道を渡ってゆく。そばを犬を連れた人が通る。色づいた木々の葉が散りかかる。(1)こんな情景が身にしみるのは、深まる秋のせいだけではない。北朝鮮が核兵器を手にしたとすれば、今ここにある当たり前の平和が、いつか揺らぎかねないからだ。
1914年に第一次世界大戦が始まったころ、ドイツの作家(2)ヘルマン・ヘッセは「平和」という詩を書いた。「みんな(3)それを持っていた。/だれもそれを大切にしなかった……おお、平和という名は今なんという響きを持つことか!」(高橋健二訳)
開戦で、学者や作家は感激的な調子で愛国心をあおった。世界市民的な思いが強かったヘッセは、住んでいたスイスの新聞に書いた。「愛は憎しみより美しく、理解は怒りより高く、平和は戦争より高貴だ」
彼は裏切り者、売国奴とののしられ脅(a)ハクを受けたという。それでも二つの大戦に反対し続け、終(b)ケツした45年に「平和に向って」を書く。
「『平和!』だが、(4)心は敢(あ)えて喜ぼうとしない。/心には涙のほうがずっと近いのだ。/私たち哀れな人間は/[ A ]も[ B ]もできる。/動物であると同時に神々なのだ!」。(c)タビ重なる戦禍の果てにようやくたどりついた平和の重みとかけがえのなさが感じられる。
(d)ボウ走する北朝鮮の「核」を、どうしたら不発のまま終わらせられるのか。この難問については、「国益」を超えた「人類益」の立場で、ことにあたってほしい。各国は今の世界にだけではなく、未来に対しても大きな責任を負っている。
『朝日新聞』2006年10月12日付「天声人語」より
【問1】下線部(a)「脅ハク」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.ハク真の演技をする。
( )
2.ハク手が鳴りやまない。
( )
3.外ハクを許可する
( )
4.ハク昼堂々と事件が起こった。
( )
【問2】下線部(b)「終ケツ」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.この絵はケッ作だ。
( )
2.堤防がケッ壊した。
( )
3.彼は高ケツな人柄だ。
( )
4.資産を凍ケツさせる。
( )
【問3】下線部(c)「タビ重なる」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.キ何学模様の布を買う。
( )
2.ド量が大きい。
( )
3.リョ情を満喫する。
( )
4.マイ回注意を受ける。
( )
【問4】下線部(d)「ボウ走」と同じ漢字を含むものはどれですか。
1.無ボウな行動をする。
( )
2.ボウ若無人な態度をとる。
( )
3.ボウ険心をかき立てる。
( )
4.粗ボウな言動を戒める。
( )
【問5】下線部(1)「こんな情景が身にしみるのは、深まる秋のせいだけではない」に込められた筆者の思いとして最も適当なものはどれですか。
1.北朝鮮が核兵器を手にしたことで、平和な秋の光景はもう再び見られなくなるように思われる。
2.日本で普通に見られる平和な光景が、いつか壊されるかもしれない状況が現れてきた。
3.秋には園児や犬などが一段と小さくて弱い者のように思え、あらためて彼らを守らなければと思われる。
4.日本の不断の努力によって築き上げられた当たり前の平和が、北朝鮮によってすでに揺るがされてしまった。
【問6】下線部(2)「ヘルマン・ヘッセ」に対する筆者の思いとして最も適当なものはどれですか。
1.国民の大多数の賛同を得た戦争政策への彼の反発は、むなしいとしか言いようのないものである。
2.他の学者や作家たちに同調しなかった彼は、心から平和を愛する者であり、揺るぎない思いが感じられる。
3.他国の新聞に自国についての意見を寄せるという彼の行為には、卑怯なふるまいだと非難されてもしかたのない面がある。
4.彼の説く「愛」「理解」「平和」という抽象的な概念は、愛国心に燃える国民をたぶらかすものでしかありえないものである。
【問7】下線部(3)「それ」が指すものとして最も適当なものはどれですか。
1.詩
2.名
3.平和
4.武器
【問8】下線部(4)「心は敢(あ)えて喜ぼうとしない」の理由として最も適当なものはどれですか。
1.やっとたどりついた平和であるが、この平和はもろく中途半端であり、心から喜べる状況ではないから。
2.やっとたどりついた平和であるが、この平和がまたすぐ崩壊しそうな様相を呈してきており、不安をぬぐい去ることができないから。
3.やっとたどりついた平和であるが、人類はまだまだ未熟な存在であり、これから進歩発展を遂げていかなければならないから。
4.やっとたどりついた平和であるが、この平和は多くの犠牲を払って手にしたものであり、悲しみや反省を抱えているから。
【問9】空欄[A]・[B]に入る語の組み合わせとして最も適当なものはどれですか。
1.A 泣くこと
B 憎むこと
2.A 善いこと
B 悪いこと
3.A 愛し合うこと
B 助け合うこと
4.A 過去を見つめること
B 未来を見つめること
【問10】本文の内容に合うものはどれですか。
1.人類が二度の大戦を経てたどりついた平和の重みは、「国益」を重視する立場の人々には実感されないものである。
2.北朝鮮の「核」を不発に終わらせるには、平和を常に主張し続けた詩人ヘルマン・ヘッセのような人物がどうしても必要である。
3.北朝鮮の「核」については、自国の利という視点ではなく、人類にとってどうすれば平和が保てるかという視点で、ことにあたってほしい。
4.当たり前の平和を揺るがしかねない北朝鮮の状況は、今すぐにではなく、むしろ未来においてこそ解決されるべき問題である。
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